【MBA授業まとめ①】Digital Investing
これから卒業までは授業が週に1回程度・卒業後の進路も決まり、時間に余裕があるので、最近はMBAで受けた授業の内容を脳内の引き出しに整理して収納する作業を進めています。せっかくなので(自分にプレッシャーをかけるために)、ここに各授業の簡単なまとめを整理していきたいと思います。基本的には自分の脳内目次用です。
まずは個人的には一番面白かったDigital Investingの授業から。
下記の項目でまとめています。あくまで自分の脳内目次用なので、書き方は雑です。
- 授業概要
- ケース・事例とキーワード
- 学び(ランダム)
- 感想・思い出
授業概要:
- 米国上場テック企業を対象に各回ごとにテーマ・企業を設定。指定されたテーマ・企業を市場、競争環境、ビジネスモデル等の観点から分析し投資すべき株価のレンジ・現状株価で投資すべきか否かを判断
- 特にSaaSを中心とした企業評価のメトリクス、評価上の主要論点などもカバー
- FACTSET(https://www.factset.com/)のアカウントを付与され、ヘビーユーズすることが推奨された
- 教授は Alastair Lawrence | London Business School
ケース・事例とキーワード:
- Microsoft, Amazon, Google: クラウドインフラ競争, PaaS, IaaS, Hybrid cloud
- Adobe: ビジネスモデルのSaaS転換と市場とのコミュニケーション
- Datadog, Fastly, Cloudfare: SaaSのメトリクス (Rule of 40, Net dollar retention, magic number, payback period)
- Roblox: メタバース, Direct Public Offering
- MarcadoLibre, SEA: Eコマース、マーケットプレイス
- Snowflake: SaaSの進化、従量課金モデル
- Amwell, Good RX, Teladoc: ヘルステック、遠隔医療
学び(個人的に印象深い学びをランダムに羅列、授業で出てきた順番):
- AmazonはPL上の主要コスト項目それぞれに対応するサービス提供を行い収入源に変えてきた。ちなみに、AWSの市場参入はS&P500の企業の中でも4か5番目と遅くfirst moverが市場を席捲する訳では無い好事例の1つ
- SaaSを知りたければAdobeの歴史を見よ。SaaSモデル変換時に一時的なfinancialsの悪化は避けられないので3年先のprojectionを示して市場の理解を得る試みをするなど、非常に革新的な取り組みを実施
Reborn in the cloud | McKinsey - RPO(Remaining Peformance Obligation)とは要するのは事業年度では売上計上されていないが契約済みの将来売上のこと。1つだけ選ぶならこの数値が企業価値評価の上で最も重要。現時点では10K, 10Qでは開示していない企業も多く、補足資料やearinigs callまで情報を取りにいくことが必要
- 売上が出てない企業のvaluationは基本はForward Price to Salesで実施。P/S/G (price to sales over growth ratio)も要チェック
-
SaaS企業のマルチプルがある程度の成熟期でどの程度に落ち着くか知りたければAdobeやSalesforceを見よ
- SaaSメトリクスは各企業で定義が異なることがあるので、企業間比較にはかなり注意が必要。大体自社が良く見える定義にしている。情報収集はPublic Comps(https://publiccomps.com/)が便利。ただし有料
- 世界のゲーム市場はめちゃくちゃデカくて$150B. これは映画業界+音楽業界の合計の2倍以上。世界のゲームプレイヤー人口は25億人おり、もはや子供のおもちゃの域は優に超えている (授業とは関係無いですが、私が愛聴しているOff Topicという音声番組のこちらの回が参考になります→Off Topic // オフトピック: #37 「メタバース」とは何か?Epic Gamesの野望 on Apple Podcasts
- DPOのメリットは市場による価格決定、自由主義的アロケーション、既存株主の流動性確保・ロックアップ無し、既存株主の希薄化無し、低いIPOコスト、など。一方、デメリットは上場時の資金調達が出来ない、上場後に価格を支えるプレイヤーが少ない(證券会社、長期保有の大型株主など。そもそもアナリストのカバレッジが付きにくい)
- サービスの進化に合わせて、会計・監査基準の急速な進化が求められている。例えばRobloxの場合はゲーム内通貨やゲーム内アイテム(消費型と耐久型が存在)の会計上の取り扱いが問題となり、上場が一時延期となっていた
- 現在のSaaSは第三世代。第一世代はsalesforceやservice now, 第二世代はasanaやzendeskで第三世代はfastlyやsnowflake。第三世代の特徴として、導入の意思決定者がデベロッパー、数時間・数日で導入可能、従量課金、アプローチする課題が比較的軽め・浅めなどが挙げられる
- 定期課金と従量課金のどちらが良いかは顧客・サービス内容次第で、必ずしも従量課金の方が顧客視点で優れている訳では無い。例えば、事前に予算をfixする必要がある顧客からは従量課金は好まれない
- 教授のおススメ情報ソース: Beth.technology | Analysis on the Best Tech Stocks, Who is Nnamdi?, MatthewBall.vc, Atlas · Bessemer Venture Partners (bvp.com), Blog | Scale Venture Partners (scalevp.com), Track Hedge Funds Using 13F Filings (whalewisdom.com), Innovation Research and Models by ARK Invest (ark-invest.com), Motley Fool Money - Motley Fool Podcasts | The Motley Fool, Chit Chat Money -
感想・思い出:
自分の関心・卒業後の進路とドンピシャだったこともあるが個人的にはMBA生活で一番面白い授業だった。スピーカーも充実しており(Lightspeedのパートナー、SnowflakeのIR, Adobeの役員など)この授業期間中にRobloxのDPOや米国長期金利上昇によりテック株の下落などがあり、リアルタイムでその道のプロである教授の意見(とその背景)が聞けた点も非常に面白かった。
教授はUC Berkeleyから移籍してきた方だったが、随所に西海岸疲れを匂わせており、何度か「少なくとも後7-8年は、あの世界からは離れてロンドンで平穏に暮らしたいね」という様な趣旨の発言をしており、興味深かった。
また、FACTSETははじめて使ったが、企業スクリーニング条件設定の柔軟性や、マルチプル・アナリストコンセンサスの見やすさなどかなり使いやすいツールだと感じた。卒業後もアカウントを使用し続けることが出来るとのことなので、今後もお世話になりそう。
以上。
目標としては、卒業までに全ての授業をまとめようと思います。この授業は、本当に学びが深かったので時間があったら特に面白かった回を個別にまとめるかも?