【MBA授業まとめ⑫】Meger, MBO, and other Corporate Reorganisations

企業再編にまつわるトピック全般について触れた授業。シェアホルダーアクティビズムやSPAC等にも触れられ、なかなか興味深い授業でした。

 

下記の項目でまとめています。あくまで自分の脳内目次用なので、書き方は雑です。

  • 授業概要
  • ケース・事例とキーワード
  • 学び(ランダム)
  • 感想・思い出

 

授業概要:

  1. M&A、Buyout、MBOディストレスト、シェアホルダーアクティビズム、SPAC等の企業再編(企業の資本市場との接点と言った方が近い?)に関連するトピックについてケース・最新事例を使いながら学ぶ
  2. 教授は Henri Servaes | London Business School

ケース・事例とキーワード:

  1. Vodafone Mannesmann
  2. Northrop Grumman
  3. Seat Pagine Gialle

 

学び(個人的に印象深い学びをランダムに羅列、授業で出てきた順番):

  1. M&Aの正しい動機:企業としての他の全ての意思決定と同様にシェアホルダーバリューの最大化を目的として、買収コスト以上の価値のある会社を買うことを目指すべき

  2. M&Aの誤った動機:コストとの比較無しに市場シェア拡大、新市場・新製品への足掛かり、防衛のための買収を目的とするのは誤りだし、事業分散、余剰資金の配分先、成長の買いなどもシェアホルダーは自身で行えるので、それだけを目的とすべきでは無い。EPSをあげるためという理由は論外でファイナンスの基礎が分かっていない。こういった誤った動機の源泉はM&A実行の報酬との連動、独立・権力への固執(防衛本能)、既存事業衰退からの現実逃避など

  3. シェアホルダーにとって好ましくないM&Aが起きやすい状況:成長率が低くキャッシュリッチな企業によるM&A...調査によるとこの様な企業はM&Aの実行割合が高いが、事業分散を目的とすることが多く、また不人気企業を高値掴みしがちでM&Aにより7%程度の価値を棄損
  4. M&Aの価値源泉:シナジー、経営方針の誤り是正、過小評価されている企業の買収の3つが柱が存在。その他、税務メリット(買収企業が赤字の場合)も存在
  5. M&Aシナジー:売上シナジー→販売チャネル・地域の拡充、クロスセリング、プライシングアップ、コストシナジー→重複機能の削減、規模の経済、サプライヤーとの交渉力向上、その他→事業モデル展開、人材獲得、競合の取り込み(特にこの部分は上記の通り他の手段も含めたコスト・メリットの試算無しに目的としてはいけない)
  6. M&Aにおける経営方針の誤り是正:単純な経営者の知識・経験不足、資本構成の誤り(高すぎるWACC)など
  7. M&Aの類型:ホリゾンタルディール→バリューチェーンの同領域企業の買収による規模拡大(スケール拡大)、バーティカルディール→バリューチェーンの川上・川下への展開(スコープ拡大)
  8. M&Aで何を買うか?:通常は対象企業の全株式取得をイメージするが、実際は株式の一定割合取得の他、対象企業が保有する事業あるいは資産の一部の買収などもあり得る
  9. M&Aの支払い手段:買い手は自社の株式が高値評価されていると思えば株式を使用するし、逆であればキャッシュを使用する方向に傾く。その他論点として買収前の資本構成・レバレッジ、既存株主構成・保有比率、税金の発生タイミング、上場or非上場、クロスボーダーディールか否か、リスク選好度合などが考慮される。その他の手段としてはアセットスワップが存在し、手法としてはアーンアウト、コンティンジェントバリュー権の付与、売り手による債権発行なども存在
  10. M&A時の企業価値評価:通常の企業価値評価と異なるのは、資本コスト・資金調達方法を含む経営(組織のリソース配分コントロール)へのコントロールを持つ前提である点と既存事業とのシナジー前提とする点
  11. その他M&A時の企業価値評価の論点:M&Aのコントロールプレミアム→本来はその様なものは存在しないはずで、経営関与への権限が大きくなるのであればそれは将来キャッシュフローの予測に反映されているはず、WACC→買収対象企業では無く自社のWACCを使うなどの誤りに気を付ける、将来キャッシュフロー→成長率等の設定をどうするか・特にターミナルバリューの企業価値に占める割合、将来必要になる投資の考慮、シナジーの規模と発生時期・シナジーの二重カウント(特にシナジー企業価値計算を別に行う場合)、M&A実施後の統合費用の見積もり
  12. M&A発表と市場反応:発表により売り手・買い手双方の価値と買収の付加価値が明らかとなる。発表前から買収対象企業の株価上昇(ランアップ)が起きることが多々あるが、これは業界トレンド、類似M&A、推測可能な関連情報発表、インサイダー情報等を原因としている。M&Aのプレミアム=買収発表前の株価変化(ランアップ)+買収発表後の株価変化(マークアップ)。ランアップにより買い手の買収コストがあがっているか否かの判断は困難...その分マークアップが下がっているという分析も存在するし、ランアップの規模・割合の大きさがディールのの価値の高さを評価しているとも言える
  13. M&Aの買い手・売り手の利益:売り手は平均30%+のプレミアムを得ており、キャッシュディール、複数社の競争入札、買い手が上場企業であることなどが上げ要因。買い手は平均してフラット~ネガティブなリターンだが、ホリゾンタルディール、単一入札、キャッシュディール、小規模企業による買収、売り手が未公開企業、株主の合意が必要であることなどがリターンの上げ要因
  14. M&Aのきっかけ:きっかけは、売り手 or 買い手 × 経営陣 or 株主 × 単一 or 複数と様々だが米国では売り手の取締役会での議論がきっかけとなることが40%程度
  15. M&Aにおける防衛策:オファー前→定款変更(デュアルクラステンダーオファーの防止、スタッガード・ボード、スーパーマジョリティ条項)、ゴールデンパラシュート、ポイズン・ピル、株式のデュアルクラス化、オファー後→事業・資産売却、株式の高値買取(含むグリーンメール)、パックマンディフェンス、買収による企業価値拡大、ホワイトナイト・スクワイアなど
  16. M&Aにおける投資銀行の役割:マッチング、ピッチ、ディール交渉、DD、防衛策、ファイナンシング、規制遵守等の支援。ビジネスモデルとしてディールが成立した場合、一定の比率を手数料として売り手(平均0.77%)・買い手(平均0.57%)から受領。ディールをより高い価格で実行することにインセンティブが働くビジネスモデルだが、レピュテーション影響によりモラルが維持されている(ということになっている)ファイナンシングの支援も可能なユニバーサルバンク型と特定業界・規模に特化したブティック型が存在。いずれの投資銀行を採用するかは、当該領域でのシェア・過去ディール経験、過去ディールの評判・結果、アナリストカバレッジ、ファイナンシングキャパシティ、フェアバリューの見立てなどで決定
  17. その他プレイヤー:リーガル→表明保証を含む契約書類関連、法務DD、会計→監査・会計DD、コンサルティング→戦略・事業計画、買収後統合計画・実行など
  18. 事業PFの多様化:内部資本市場の創出に等しく、情報乖離とエージェンシー問題が発生しずらいという2点の理由から外部資本の調達よりも調達コストが安く、企業価値の向上に繋がやすい。また多様化によるキャッシュフローの安定、事業間の利益相殺による税務メリット等が存在
  19. 事業PF多様化のデメリット:単一事業と比較した非効率運営、資本の非効率配分(お金が余っているのでリターンが低い事業へ投資)、市場評価のコングロマリットディスカウントなどのデメリットも存在。コングロマリットディスカウントについては、そもそも事業PFを分散している=各単一事業で拡大機会を得られていない&評価の相対的に低いその他事業を高値掴みしている故に発生しているという見方も存在
  20. 事業PF多様化成功の鍵:ディスカウントレートの各事業個別設定、各事業の資金拠出のフェアネス(儲かっている事業から無尽蔵にお金を引き出し、利益の出ていない事業に投資するということをしない)
  21. コングロマリットの減少トレンド:グローバルではコングロマリットは解体が進む傾向。事業PFの多様化が株主価値の最大化に繋がっていないという構造的要因がある様に見受けられる&個別業界・産業ごとのグローバルリーダー、PEファンド等の受け皿となるプレイヤーの登場
  22. 組織再編時の他の選択肢:資産売却、スピンオフ、カーブアウト(本来的には事業を切り出しIPOすることを指す)
  23. シェアホルダーアクティビズム:一部株式を保有し企業に対し様々な経営改善の要求を実施。要求の例としては、オペレーショナル系→コストカット、ファイナンシャル系→余剰資金の株主還元、配当増加、自社株買い、再編系→事業売却、抵抗・反対系→売却・売却価格、買収反対、ガバナンス系→経営陣刷新、ボードシートなど。一定の株式比率・提案のための分析が必要になるため他ヘッジファンド・投資家と比較してポートフォリオを分散しにくい。複数のアクティビストが共同して活動する場合やショートポジションを保有する場合も。アクティビストは悪者の様に言われることもあるが、実際アクティブストの保有が発表された会社の株価は平均して5%上昇しており(逆に撤退時は0%)、ROAは3年で2.8%改善している。またアクティビストが参入した企業ではM&Aの数が減り、同業企業への波及効果としてもレバレッジの上昇、配当増加、設備投資の抑制、ROA改善などが見られる
  24. SPAC (Special Purpose Acquisition Vehicles):未公開企業の買収を前提としてIPOを行い投資家から資金を集め、通例24カ月以内に買収を行う。用意されている資金の80%以上の企業価値の企業を対象とするのが通常。投資家はSPACの株式とワラントの組み合わせのユニットに投資を行い、ワラントにより通常15%程度のプレミアムで株式の購入が可能となるため、将来の更なるアップサイドを期待できる。このワラントはユニットの価値を高めるとともに、SPACのプロモーターはワラントをディスカウント価格で購入することで、将来リターンの源泉としている
  25. 買収対象企業・投資家にとってのメリット:買収対象企業にとってのメリットはIPOのプロセスを経ずに上場が可能であるため、IPOの費用が不要な点、ロードショー・ブックビルディングのプロセスを経ずディールの概要・成立の見通しが立ちやすい点、将来見通しを踏まえたディール交渉が可能な点。投資家にとってのメリットはディールの成立のコントロールが可能(投票権)であり、ディールが発生しない場合は元の投資額で償還を受けることが出来、ディール成立時はワラントも含めた大きなアップサイドが期待でき、未公開企業への投資オプションを提示している点
  26. SPACのスポンサーのインセンティブ:スポンサーはSPACの一定比率をディスカウント価格で保有することで好条件のディール特定・実行のインセンティブとなっている(含む24.のワラントインセンティブ構造上、ディール実行へのバイアスがかかるのが現実
  27. プライベートエクイティディストレストについても触れられたが他授業と重なるのでスキップ

 

感想・思い出:

当時、日本でインターンをしていたため、時差のある中での受講であり、授業を受けていた当時は割と印象が薄かったものの、改めて復習してみると、なかなかに内容の濃い授業であったことが今更分かりました

(300ページ超の資料のお陰で復習が容易に出来ました、教授ありがとう...)

 

ということで授業当時のビビッドな感想・思い出は、ほぼありません。ホームページで教授の顔を確認して「あれ?こんな顔の人の授業受けたっけ?」と思ってしまったレベルです(恥

やはり時差のある中での深夜受講は非効率ということでしょうか...