【MBA授業まとめ⑨】Financing the Entrepreneurial Business

スタートアップの資金調達について学ぶ授業(のはずでしたがLBOやサーチファンド、企業価値評価手法など、他授業と被る内容も多かった)

印象薄目の授業なので、他授業と被りが少なそうなトピックのみ整理しています。

下記の項目でまとめています。あくまで自分の脳内目次用なので、書き方は雑です。

  • 授業概要
  • ケース・事例とキーワード
  • 学び(ランダム)
  • 感想・思い出

 

授業概要:

  1. ステージごとの資金調達・企業価値評価の主要論点
  2. 実際のタームシートの模擬交渉
  3. 教授は Gary Dushnitsky | London Business School Luisa Alemany | London Business School

ケース・事例とキーワード:

  1. Fuertes Vienteos Wind Farm:ステージごとの資金調達、赤字の場合の税金控除
  2. Ntellu:未公開企業の企業価値評価
  3. PLNT:未公開企業のDD
  4. Trip4real:タームシート、模擬交渉
  5. ONk:コンバーティブルノート・転換社債
  6. BGTech:グロースステージ

学び(個人的に印象深い学びをランダムに羅列、授業で出てきた順番):

  1. 資金調達手法:デット→担保付きローン(固定担保・不動担保)、無担保ローン、メザニン、無担保社債、オーバードラフト、分割払い・リース、エクイティ→普通株優先株、その他→補助金クラウドファンディング、ファクタリングなど
  2. シード期:アイディア~Minimum Viable Product~初期顧客獲得~商業化の目途が立つ・最初の売上までの期間。調達手法としてはbootstrap (自己資金・事業売上)、3Fs (friends, family, fool)、補助金クラウドファンディング、借入、インキュベーター・アクセレレーター、エンジェル、VCなど
  3. スタートアップ期:顧客基盤拡大~プロダクト・サービスレベルでの損益分岐(≒ファイナンシャルな持続可能性・ユニットエコノミクスの証明)までの期間。調達手法としては補助金クラウドファンディング、借入、ファクタリング、VCなど
  4. グロース期:損益分岐以降。調達手法としては借入、ファクタリング、VCをはじめとする投資家、など→成熟期:市場・事業の成長率の鈍化、市場シェアの固定化以降。新規事業・新規市場への進出等を除き資金使途は主に既存事業の保守・メンテナンス。Leverage Buy Out, Management Buy Outs, Management Buy Insの対象となりやすい時期
  5. 赤字の場合の税額控除:国により異なるが、往々にして赤字分の翌年以降への繰り越し・黒字との相殺が可能。また前期の支払い法人税から還付を受け取れる場合も(日本はこれに該当)
  6. Gain to gearing:財務構成でDebt比率を上げることにより、返済額分の節税効果が得られall equity financedの場合と比較し企業価値が向上。実際はDebt比率が上がるにつれ破産リスクが高まるため、一定のDebt比率が企業価値の最も高い均衡点となる
  7. 少数株主:国により異なるが、基本的に未公開企業の少数株主は流動性が少ない&配当も無いことが多いため、保有株の価値は額面よりもディスカウントされる。VC等のプロ投資家はこれを補うために投資時に様々な契約条項・優先権を設定する
  8. 企業の評価手法は主にマルチプル、DCF、アセットベースの3種類。実際はマルチプル法が最も用いられるが、マルチプル法も既存ビジネスの将来キャッシュフロー+今後の新規機会からの将来キャッシュフロー(P/E=1/r+Present value og growth ops per share/Earnings per share )という意味ではDCF法に理論的な根拠をおいていると言える
  9. マルチプル法とトートロジー:マルチプル法はトートロジーに陥り上昇していく傾向にある点に注意が必要。またバイアウトディールで他バイアウトディールをマルチプルの算出に利用する場合は、企業価値≒資金調達のキャパシティとなっている点も注意が必要
  10. VCの企業評価:将来キャッシュフローからDCF法 or マルチプル法で将来の企業価値を算定→40-70%のディスカウントレートで調達後現在価値を算定(→調達額/調達後現在価値で保有株式比率を決定→ESOP・将来調達を考慮し各ステークホルダー保有比率を調整)しかしながら少数株主ディスカウント、非流動性ディスカウント、ハンズオン支援等の付加価値、将来キャッシュフローの不確実性等を考慮しても40-70%のディスカウントレートを理論的に正当化するのは困難。実際は調達前の評価額を算定し、そこに調達額を足して調達後評価額を算定するという手法が取られる。調達前評価額は計算式で示せるものでは無いが、以降のラウンドの希薄化・ESOP等を踏まえた上で10x以上のリターンが可能と見做せる評価額か否かがベースの基準
  11. 財務構成に対するマルチプル法のセンシティビティ:P/Eマルチプルの方がEBITマルチプルより財務構成に対するセンシティビティが高い(≒借入返済の節税効果 & 借入返済の利益額への直接影響)
  12. 未公開企業のDDの視点:OUTSIDE-IMPACT フレームワーク...Opportunity, Uncertainity, Team, Strategy, Investment, Deal, Exit, Idea, Market, Present value, Acceptance, Competition, Timing, Speed
  13. 資金調達ソースを検討する視点:評価額・希薄化、次回以降の調達(今回の調達後の評価額を上げるほど、次回以降の調達・エグジットの水準があがる)、付加価値(ブランド・顧客チャネル等)、節税効果、調達にかかる時間
  14. タームシートの主要条項:財務系→希薄化防止条項、残余財産優先分配権、配当、統制系→優先交渉権、ドラッグアロング・タグアロング、拒否権、取締役構成・シート、組織・人事系→オプションべスティング、ESOP、キーマイルストーン、その他→登録請求権(IPO)、ロックアップ、コンフィデンシャリティ・エクスクルーシブ
  15. コンバーティブルノート(転換社債):新株予約権付の短期借入で、主にシード期に利用され、シリーズAで自動的に優先株に転換される。主要条項として利率(4-8%, 借入額に組み入れ)、ディスカウント率(シリーズAバリューエーションに対するディスカウント)、バリュエーションキャップ(シリーズAバリューションのキャップ)など

 

感想・思い出:

授業名はFinancing the Entrepreneurial BusinessとなっているがLBOやサーチファンドの話などもカバーされており、PE&VCサーチファンドの授業との差別化があまりうまく出来ていない様に感じる授業だった。教授との相性もあるだろうが、前記の通りあまり目新しい内容も無く・スピーカーもそこまで充実している訳では無く、概して印象が薄目な授業だった...

タームシートの模擬交渉の相手が「ごめん、今モルディブだから電波弱くてZoom顔出し出来ないわ 汗」と言っていていたのがとても羨ましかった記憶がある。向こうはモルディブをエンジョイしており準備不足だったので、当然交渉は圧倒的に有利に進めめられたのだが「交渉に勝ち、気持ちで負ける」とはこのことかと思った。