【MBA授業まとめ⑦】Entrepreneurship Through Acquisition

いわゆるサーチファンドの授業。

日本でも伊藤公建氏のSEARCH FUND JAPANや嶋津紀子氏のJapan Search Fund Accerelatorなどの活動により市場が立ち上がりつつある分野であり、日本の状況(経営者の高齢化、後継者不足、優良中小企業の多さ等)を考えると、今後もこの分野が盛り上がっていくことは確実だと感じ、ビジネスモデルをきちんと理解しておきたい(授業前は自分が挑戦することも考えていた)と思い受講しました。

下記の項目でまとめています。あくまで自分の脳内目次用なので、書き方は雑です。

  • 授業概要
  • ケース・事例とキーワード
  • 学び(ランダム)
  • 感想・思い出

 

授業概要:

  1. サーチファンドのビジネスモデルと実践のプロセス・主要論点をケースベースで学ぶ
  2. 自分がサーチファンドを実践すると仮定し、投資基準の策定、実際に投資したい業界・企業の選定を行いビジネスケースを作成・発表
  3. 教授は Luisa Alemany | London Business School と Simon Webster

 

ケース・事例とキーワード:

  1. Alison Roberts:キャリアとしてのサーチファンド、サーチファンドの類型
  2. Montebello:サーチファンドの立ち上げ・サーチ活動
  3. Sea Breeze Capital:買収対象企業のDD、ファイナンシング
  4. ArchivesOne:投資からエグジットまでの一連の流れ

 

学び(個人的に印象深い学びをランダムに羅列、授業で出てきた順番):

  1. サーチファンドのファクトベース(グローバル, 2020):スタートする平均年齢は31歳、MBAが92%、ソロが60%、バックグラウンドはプロフェッショナルキャリアにやや偏り(投資銀行が10%、プライベートエクイティが24%、コンサルが14%で事業会社経営関連が18%、その他が34%)平均サーチ期間は20カ月前後、サーチファンドのうち67%が買収を実施し89%でキャピタルゲインが発生、1-2xのリターンが52%・2-5xのリターンが30%・5-10xのリターンが9%・10x以上のリターンが9%
  2. サーチファンドにもトラディショナル型、セルフファンド型、スポンサーバックド型(含むサーチファンドアクセレレータ)の3つのタイプが存在
  3. トラディショナル型はサーチファンドのファンドレイズ→サーチ活動→買収・追加ファンドレイズ→オペレーション→エグジットというプロセスで投資家は平均15社・人, 最大投資家はサーチャー自身で25-30%のエクイティを保有し段階的なファンドレイズを行い(初期で50%, 買収時に50%)、サーチ期間の給与はMBA平均の2/3程度が目安
  4. セルフファンド型はサーチ活動→買収・ファンドレイズ→オペレーション→エグジットというプロセスで投資家は平均4社・人, 最大投資家はサーチャー自身で50-70%のエクイティを保有し、サーチ期間の給与は無し
  5. スポンサーバックド型はサーチファンドのスポンサー探し→スポンサーとの条件合意→サーチ活動→買収・ファンドレイズ→オペレーション→エグジットというプロセスで投資家は1社・人, エクイティ比率・サーチ期間中の給与はスポンサーとの合議次第
  6. サーチファンドへの投資家がサーチャーへ期待すること→サーチファンドモデルの知識(ビジネスモデル、過去事例、実践プロセス)、コミットメント(サーチャーとの面談、インターンシップ、ファイナンシャルな準備)、経験、相性. サーチャーが投資家へ期待すること→資本(サーチプロセス・買収双方への出資意向、資本の条件・制約)、経験(支援可能なプロセス、ローカル知見、サーチファンドの経験)、メンターシップ、その他(トレーニング、ネットワーク)
  7. 理想的なサーチファンドの体制:サーチャー+サーチャーアドバイザリーボード+ローカルの投資家+サーチファンド経験者+インターナショナルなサーチファンド投資家
  8. サーチファンドのサーチ活動のファネル推移の例:3300社以上へコンタクト→256社から回答→124社へフォローアップ→25社と面談→16社と価格交渉→5社と基本合意書(Letter of Intent)→1社買収実行
  9. 買収・ファイナンシングファクトベース(米国・カナダ、2006-2019、中央値):買収価格は$10.8M, 買収時のEBITDAは$2M, EBITDAマージンは21.7%, EBITDA成長率は17.5%, EBITDAマルチプルは5.0-6.0x
  10. 買収プロセス:Indication of Interest(オファー価格レンジ、ベースアサンプション、ファイナンシング計画、ディールストラクチャ、クロージング時期、エクスクルーシビティ、移行期間)→初期DD→Letter of Intent(更新版オファープライス、ディールクローズ時のワーキングキャピタル、守秘義務・勧誘禁止条項)→Confirmatory DD→クロージング
  11. 特にサーチファンドの買収プロセスで注意するべき点:買い手・売り手ともにM&Aの経験が未熟・皆無である場合が大半...買い手は売り手の心理的不安(突然のアドバイザー・プロフェッショナルとの会話、多数のジャーゴンなどがこれを加速)をケアしつつ、投資家・アドバイザリーボードを最大限活用することが必須
  12. 対象企業のDD項目:Quality of People→honest respected seller, talented middle management, dedicated employee base, sophisticated customers and suppliers, Quality of Cash flows→recurring CF, high growing margin, diverse CF base, Quality of Industry→size, growth and stability of demand, domestic and international prospects, fragmented competitive landscape, low threat of external shock (tech, regulatory, legal, environment, etc), Quality of Market Position→defendable, high swithcing cost, clarity on competiitve advantage, Quality of operations→simple & understandable, high ROI, identifiable areas for improvement, Quality of liquidity options→ability to generate 30% compound IRR, potential future buyers, potential intermediate liquidity events
  13. Framework of desirable industry and business economic characteristics:Industry Financial→High indistry growth rate, both gross and net margins are high, the industry competes in a sizable and fragmented market, no seasonality and cycliality, small part of the customer's cost structure, no ongoing R&D requirements, an exit path fot a strategic buyers, capital market, no reimbusement risk, Industry Operational→Barriers to entry, high customer switching, no obvious dislocation risk, no technology risk, low vendor dependency, low competition, presence of network effect, B2B (than B2C), no regulatry risk, lower industry professionalization, Business financial→historical revenue & profitability growth, reccuring revenue with low churn, healthy EBITDA margin, high EBITDA FCF conversion, presense of operating leverage, moderate business size, low revenue concentration, multiple growth levers, attractive and understabdable unit economics, Business operational→Simple business model, moat surrounds the business, business being sold for non economic reasons, stable emloyee base with no key person risk, undermanaged and unprofesionalized business, established and attractve customer gathering process, no unions, Entrepreneur fit 
  14. Simon Webster氏の実績:1995年の投資実行、2005年にPEにexitし10年でIRR21%, 3.7xを実現...ただし買収直後に大型顧客を失う、買収5年後に赤字転落等数えきれない程の苦難と10年という期間がかかった...
  15. 有益な情報ソース:2020 Search Fund Study: Selected Observations | Stanford Graduate School of Business Search Funds | IESE Business School

 

感想・思い出:

Simon Webster氏は世界で5番目(自称)にサーチファンドモデルを実践した人物ということで界隈の関係者やサーチファンドを実践している卒業生がスピーカーとして参加してくださり、リアリティのある話を聞くことが出来た点は面白かった。自分自身が卒業後のキャリアとして選ぼうという判断には至らなかったが、本校の在校生・卒業生ともに挑戦している人は一定数おり(私のクラスメイトにもサーチファンドに取り組むという決意を持ってMcKからの社費を断って私費で留学してきているとても優秀な友人がいる)、自分も人生が5回くらいあったら、1度くらいは挑戦してみたいと思った。

この授業を受けていた時期に、日本人同級生が日本でサーチファンドに取り組んでいる方(既に買収実行済)と話す機会を設けてくれ、自分にとってよりイメージしやすいリアリティのある話を聞けた点も良かった(LBSは恐らくMBAの中で日本人が一番多い学校だと思うが、この様な場の設定をしてくれる同級生がいる点は非常にありがたい)

その他雑多な思い出としては...

・グループ課題でExecutive MBAのインド人が作成したファイナンシャルモデルが私としては納得いかず、色々と指摘・修正していたら、先方から電話がかかってきて1時間くらい口喧嘩になったのは良い思い出 笑 最後は仲直りしてロックダウンが明けたら一緒にパブに行こうということになり、円満に終わりましたが...

・最終課題は、授業での学びを自由記述しなさいというものだったので、「元はサーチファンドに関心があったが、授業を経てサーチファンドキャリアは歩まないことにした」ということをサーチファンド、バイアウトファンド、ベンチャーキャピタル、スタートアップを比較しながら割とロジカルに書いたら(書いたつもり)めちゃくちゃ低い評価で納得いかなかったw (単純に私の書いた内容が拙かっただけかもしれないですが...)