【MBA授業まとめ⑤】Private Equity and Venture Capital

プライベートエクイティ全般の基礎的なトピックについて学べる授業。

コンサル時代にバイアウトファンドのビジネスDDに幾度か関わらせて貰ったことがあったが、かなり狭い部分(ビジネスケース・PL)にしか関わっていなかったということを実感した。

色々整理していたら8000字超えになってしまった 汗

下記の項目でまとめています。あくまで自分の脳内目次用なので、書き方は雑です。

  • 授業概要
  • ケース・事例とキーワード
  • 学び(ランダム)
  • 感想・思い出

授業概要:

  1. プライベートエクイティ投資のビジネスモデル・ストラクチャ、投資戦略、プロセス、バリューション、ファイナンシングについてケース事例を活用しながら学ぶ
  2. 教授は Florin Vasvari | London Business School  Jim Strang | London Business School  Christophe Evain | London Business School

 

ケース・事例とキーワード:

  1. Realza Capital:ファンド組成、ファンドパフォーマンスの評価
  2. Optos:ベンチャーキャピタル投資
  3. Quadriga:ポートフォリオアロケーション、DD
  4. Styles and Wood:バリューアップ
  5. Teamsport:LBOモデル、デットキャパシティ
  6. ECP - IHS:新興国投資
  7. Adams Street:Funds of Fundsのポートフォリオアロケーション、DD
  8. EQT:サステイナビリティの観点、PEの報酬体系

 

学び(個人的に印象深い学びをランダムに羅列、授業で出てきた順番):

プライベートエクイティ全般:

  1. プライベートエクイティファンドの特徴:LP/GPストラクチャー、LPレイヤーでのみ課税、ドローダウン、クローズドエンド、時限付き、使途指定無し、2%マネジメントフィー+20%キャリードインタレスト、分散投資(業界、企業、年、地域等)
  2. 企業のフェーズによるファンドプレイヤーの推移:スタートアップ期→エンジェル、VC、サーチファンド. グロース期→グロースファンド、デットファンド. 成熟期→バイアウトファンド、デットファンド、インフラ・不動産ファンド. 衰退期→ディストレスファンド、スペシャルシチュエーションファンド. セカンダリー・ファンドオブファンドは全フェーズに跨って存在
  3. 一般的なキャリードインタレストの計算:(Exit総額-投資総額-マネジメントフィー)×20%。残りの80%はLPが受領。ただしリターンが設定されたハードルレート(通常8%)を超えた場合のみキャリーが発生。キャリーの計算はディールごと(米国型)とファンドレベル(欧州型)が存在
  4. プライベートエクイティファンドへの投資家:年金基金(Public 35%, Private 11% 2019年)、ソブリンウェルスファンド(12%)、保険会社(12%)、銀行、事業会社、大学基金ファミリーオフィス + ファンドオブファンド、フィーダーファンド、セカンダリーファンド、プライベートウェルスマネジメント会社等 + GPコミット。ただしそれぞれのPEへのアロケーションは高くは無く、年金基金で3-6%、ソブリンウェルスファンドで10%前後、保険会社で2%前後
  5. GPのインセンティブ・フィーはマネジメントフィー、キャリードインタレストに加えて、トランザクションフィー(1-1.5%)とコインベストメントの機会
  6. LP agreement (投資事業有限責任組合契約)の一般的な条項:フィー規定・ファンド費用負担(上述)、優先分配、キャッチアップ、クローバック、投資領域制限、キーパーソン条項、コインべスト
  7. グローバルトレンドとして上場企業の数は減少傾向。米国では2007年にPE backedの企業数が上場企業数を上回った。上場企業数はピーク時比較で2017年末には米国で-53%、 英国で-36%、フランスで-61%
  8. PEファンド傘下の企業の規模はかなり大きく、KKRで75万人以上、CARLYLEでで65万人以上、Blackstoneで45万に以上。またAUMは2019年時点で400兆円以上。過去10年で累計3兆円以上のファンドを組成しているファンドが20以上存在
  9. ファンドの平均サイズ(2019年度)はバイアウトで$1,567M、ベンチャーキャピタルで$139M。アクティブなファンド数はベンチャーキャピタルが全体の44%、グロースが29%、バイアウトが18%でその他が9%
  10. ファンドマネージャー数の地域別割合は米国が世界の40%、欧州が21%、アジアが31%(中国が21%で日本は2.4%)、その他地域が8%
  11. 各アセットクラスへの一般的なリターンの期待値:ベンチャーキャピタルは3X・30% IRR、グロースは2.5X・25% IRR、バイアウトは2X・20% IRR、メザニンは1.5X・15% IRR、ディストレストは3X・30% IRR
  12. PEの継続的な成功の構造的要因:アクティブマネジメント(ソーシング→DD→投資→管理の全フェーズに関与)、オーナーシップの集中、優れたインセンティブ設計(マネジメントフィー・キャリーなど長期視点のインセンティブ設計による、優れた人材のリテンション)、高い失敗コスト、上場市場のプレッシャーからの解放、インサイダーによるExit判断
  13. ファンドの相対評価の一手法:上場株式・インデックスで投資年・額を合わせて”モック”ファンドを作成し、パフォーマンス比較を行うという手法が存在
  14. プレースメントエージェント:多くのコンタクト・経験をレバレッジしLPとGPを繋ぐ役割を担う。1000億円規模のファンドだとUBS, Credit Suisse, Merrill Lynchなど、500-1,000億円だとCampbell Lutyens, Lazardなど、~500億円だとCLM, Deloitteなど
  15. IPOのメリットとリスク:メリット→資金調達、既存株主・従業員への流動性提供、ブランド強化・信頼向上、ガバナンス強化、従業員のリテンション、M&A機会の増加など. リスク→短期業績至上主義化、コンプライアンス&市場・株主コミュニケーション負荷増大、市場・競合が把握する情報の増加、コントロール喪失、ロックアップ
  16. その他エグジットのメリット・リスク:トレードセール→メリット:簡易プロセス(vs IPO)、 リスク:交渉プロセスにおける競合への情報開示、経営陣・従業員解雇(の可能性)、合併後のブランド・事業消失(の可能性), セカンダリーバイアウト, →メリット:簡易プロセス(vs IPO)、アップサイド機会の維持、市場・競合への情報開示不要、PE(バイアウト)の共通思考・言語、リスク:低めのバリュエーション、更なる借入(レバレッジ)、PE間のバリュエーション(市場の証明無し)、限定的なアップサイド(?)
  17. 一般的なIPO時の主幹事選定基準:業界知識・類似企業のIPO実績、安定株主候補のコンタクト、上場後のアナリストカバレッジ、上場後再調達の支援体制、ファイナンス計画への見立て、上場時期・必要な準備への見立て・遅延なく実行する能力(実績)、補償・賠償、フィー体系など
  18. プライベートエクイティのバリュエーションは大きく分けて、DCF、マルチプル(ファイナンシャル・ノンファイナンシャル)、純資産ベース(資産・負債)の3種類。直近の投資があった場合は当然その際のバリューエーションがアンカリングプライスとなる。客観性はマルチプル法が最も高く、次点が純資産ベースで最も低いのがDCF (PL予測、成長率、流動性ディスカウントなど客観性が低い)
  19. プライベートエクイティのバリュエーション・AUM計算のバイアス要因:ファンドレイズ期、市場の急激な変化時、ファンド期末、LP担当者のパフォーマンス測定時(共謀の恐れ)
  20. 経営陣のインセンティブ設計:目的は結果達成への強い動機付け・租税効率の良いパッケージの提供。手法としては普通株転換社債コールオプションワラントなど
  21. 新興国投資の動機・リスク:動機→競争少、人口増、市場成長、市場環境改善余地、高リターン. リスク→法的環境、汚職、政治・地政不安、情報・プロフェッショナルサービスの質、ガバナンス、社会慣習、資金確保、高ボラティリティ、利益の送金
  22. プライベートエクイティ・デット等のオルタナティブアセットに投資されている資金量はグローバルな富10%程度に過ぎない。8-9割は上場株・債権に投資されている。オルタナティブアセットにも、不動産、ヘッジファンドなども存在。オルタナティブアセット内でのアロケーション先選定基準は、リスク・リターン、利回り、ボラティリティ、投資分散、他アセットとの相関など
  23. FoFのプロコン:プロ→Jumpstart allocation, Outsourcing, Ecnomies of scale, diversify investments, deal flow availability, access to top GPs, access to high quality fund manager, bargaining power、コン→additonal or double fee, illiquidity, less control, less customization
  24. FoFの投資分散の視点:ヴィンテージ、地域、アセットクラス(ファンドタイプ、投資戦略)、ファンドマネジャー、業界
  25. FoFの投資地域選定基準:IPO exit環境、投資家の権利保護、会計・税・法規制、情報開示・DD水準、エクイティカルチャー、起業文化、投資機会、ファンドマネジャーの質
  26. FoFの投資先選定基準: 投資戦略→ディールフロー・ソーシング、DDプロセス、投資実行、バリューアップ、PFモニタリング、Exit能力・支援、投資戦略の一貫性、競合優位性、コインベストメント. ファンド体系→フィー、条件、チーム構成、採用計画、インセンティブ設計. チームケイパビリティ→各メンバー能力・一貫性、投資・リターン実績(IRR, リターンの分散、マイナスリターン案件等)、前ファンドの投資進捗、既存案件per メンバー. その他→他投資家、法務DD
  27. DDに含むべきサステイナビリティの観点:透明性と責任(汚職マーケティング・ラベル、プライバシー、利益相反)、環境(エネルギー消費、排出、水利用、オフィスゴミ、出張)、多様性と再教育(従業員デモグラフィ、トレーニング)
  28. PEの報酬体系:報酬に影響を与えるパラメタ→ファンドサイズ、フィー、キャリー、ハードルレート、リターン・スケジュール. 実際の報酬目安→2020 Europe and Africa Private Capital Compensation Survey | Heidrick & Struggles
  29. ファンドストラクチャのトレンド:ポートフォリオの所有をファンド間で移行するcontinuation fundが増加傾向。その他master feeder structures, parallel fund, co-investment structuresなども活用されている。目的は租税効率化、法的責任所在の仕分け、投資家資金の保護、ファンドマネージャーインセンティブ設計
  30. ファンドリターンの測定と特性:TVPI(Total Value to Paid-In Ratio)→ファンド期間が終わりに近い場合はNAVは一部実現困難である可能性が高いため使用不適、DVPI(Distributeed Value to Paid-In Ratio)→ファンド期末の使用が適切・投資実行が進捗していない時点での使用は不適、RVPI(Residual Value to Paid-In Ratio)→ファンド初期の使用が適切。ただし全ての測定方法が資本の時間価値を加味していない点に注意が必要。結果として時間価値を加味するIRRが最も利用されている。
  31. IRR:ファンドのエグジットが全て終わった後に算定されるFinal IRRとInterim IRRの2種類が存在。特にInterim IRRは算定時点でのキャッシュのインフロー・アウトフロー、エグジットまでの期間等が不透明な中で仮定を前提に算定されており利用に注意が必要
  32. ファンドリターン測定の課題:ファンド間で定義が異なる。例えば、フィーを加味するか否かや、初期投資からのリターンの再投資を行っているか否かなどで、見かけ上のリターンは大きく変化する。またネガティブリターンの案件は保有期間を引き延ばすことでIRRが改善して見える、IRRを良く見せるため投資の初期・エグジット時にデットを活用する(デット活用によりファンド資金での投資期間を短くする)など

 

バイアウトファンド:

  1. バイアウトファンドのリターンの源泉:EBITDA成長、マルチプルエクスパンション、デットリペイメント (+ 為替・租税回避)
  2. バイアウト時のEBITDAマルチプルは2009年の5.6xを底に上昇傾向。2017年には10xを超えて10.7x程度
  3. ディール検討・実施時の主要素:ベンダーリレーション、DD、ファイナンス(金融機関選定、借入条件交渉)、経営陣(既存評価、外部登用、インセンティブ設計)
  4. DDの主要項目:ディール概要(ディール対象、プロセス、売り手)、マクロ環境・トレンド、市場構造・パフォーマンス(市場定義、市場規模・推移、競争環境、ブランド・ノウハウ、プロフィットドライバー、業績トレンド)、ファイナンシャル(利益見通し、キャッシュフローの固さ、機会・リスク)、オペレーション(テクノロジートレンド、資産の質)、経営陣(経験、コミットメント)バリュエーション・エグジット(利益・マルチプル推移、キャピタルストラクチャ)、投資領域・手法、既存ポートフォリオとのフィット・シナジー
  5. 投資テーマの類型:Build-ups(連続買収によるシェア拡大・スケールメリット)、Under-managed full potential(経営管理・投資が不十分であった事業のカーブアウト)、Cyclical Plays (業界のシクリカリティ利用)、Sector evolution(技術・オペレーション革新、新市場セグメントの登場等で変化が加速する領域)、Profitable niches、Turnarounds
  6. レバレッジのプロコン:プロ→ディールサイズの拡大、リスクシェア、資本コスト最適化、租税効率化(利息は税控除対象.)コン→ステークホルダー増加、ディール条件・ライフ制約、損失の拡大可能性 
  7. レバレッジファイナンスの成功・失敗要因:成功要因→安定市場、継続成長、リカーリングプロフィット、高い予測性、固いキャッシュフロー、経験豊富なリーダーシップチーム. 失敗要因→景気後退、設備投資集約的、急すぎる成長、テクノロジー革新、高いボラティリティ
  8. 適正レバレッジの算定はキャッシュフローベースと市場ベースの2種類存在。前者は通常通りキャッシュフローの見通しを踏まえて適正な条件を設定。後者は直近の類似案件ベースでレバレッジを決定。
  9. デット市場の構造的リスク:上記の後者が増えたことで、レバレッジは拡大傾向に→Collateralized Loan Obligationの隆盛がこのトレンドを更に加速→コベナンツ・ライトローンの増加によりデフォルトが先延ばしにされる傾向→経験の少ないファンドの増加→市場は一定のシクリカリティを持つため、いずれ訪れる景気後退に対しリスクが拡大した状態
  10. デットにも様々な種類があり低リスク・リターンのものから順にシニアローン、劣後債、メザニン(Loan and bonus at maturity, Loan bonds and warrant, Pay if you can, Pay in kind)、株主ローン
  11. コベナンツの種類:肯定的コベナンツコンプラアンス、保険、表明保証、リスクヘッジ、情報開示. 否定的コベナンツ→財務比率(interest coverage, cashflow coverage, leverage to EBITDA, etc)、設備投資、買収、借入、経営陣交代

 

ベンチャーキャピタル

  1. VCタームシート:タームシートの基本精神は、権利・義務の明確化、起業家と投資家のインセンティブの整合。定款、株式購入に関する合意、投資家の権利に関する合意、先買権・議決権行使に関する合意で構成される。主要な項目としては優先分配(配当、残余財産分配、清算)、バリュエーションと投資資金の保護(希薄化防止、優先引受・Pay to Play、先買・タグアロング・ドラッグアロング、新規ファイナンス・買収・売却・ストックオプション等の株主承認)、投資管理(ボードシート、事業計画等の承認、情報請求、ESOP・べスティング、競業避止)、エグジット(上場努力、登録請求、償還)
  2. ファイナンシングラウンドの推移・一般的な定義:シード(コンセプトの証明)→スタートアップ(プロダクト開発、初期マーケ)→ファースト(初期フルスケール製造・販売)→セカンド(ビジネス拡大のためのワーキングキャピタル)→サード(ブレークイーブンのための規模拡大)→ブリッジ(上場に向けた操業資金)
  3. エンジェル投資家のモチベーションは、適切な距離感でのスタートアップへの関与、ネットワーキング、技術・市場変化へのキャッチアップ、知的挑戦、社会還元など。エンジェル投資家にも複数のタイプがおり投資領域の経験多寡×関与の多寡の2×2で整理出来る。少・少はファイナンシャルリターンの追求、少・多はEx起業家が多く、多・少は特定領域の知見を有するタイプ。エンジェルの関与を受けることは業界知見の活用、ビジネスプランの洗練、採用、ネットワーキング等で有利に働きうる。一方でDDの精度の低さ、フォローオン投資余力の小ささ、他投資家からの投資が受けにくくなるなどのデメリットに繋がり得る場合もある。米国、欧州ではエンジェルのネットワークとそれを支える制度が発達しており、複数の組織化されたエンジェル集団が存在。米国エンジェルのファクトベース→HOME | the-american-angel

 

感想・思い出:

就活時に自学していたので目新しい内容は少なかったが、アセットクラスごとのダイナミズム・論理を俯瞰して学べた点はとても良かった。卒業後はベンチャーキャピタリストへの道を進もうと思っているが、偏った盲信無く自分が関わる領域をファクトベースを踏まえて相対的に捉えられる様になったと思う。リターンのボラティリティが少なく、扱う「数字」も大きく(故に自分の報酬の期待値も高く)、LPにとってプライベートエクイティの中でも手堅く資金をアロケートしやすいのは明らかにバイアウトであり、それでも自分はあえてベンチャーキャピタルを選ぶのであるという覚悟をきちんと持てたと思う。

しかしながら授業名はPrivate Equity and Venture Capitalとなっているにも関わらず授業で扱うケースのうちベンチャーキャピタル投資のものは1つのみだった点は正直残念だった。

LBOモデルはやんわり触れる程度で「最終の筆記試験にはLBOモデルは出題しません」と教授が宣言していたのに、ちゃっかり「簡易LBOモデルを組みなさい」という問題が出題がされていた。私は就活時に練習していたのでナントカ対応出来たが、周りの生徒は「どういうこっちゃー!!!」と怒り心頭であった。教授がなぜ不必要な宣言をしたのかは謎である。(ちなみに就活時は 本格的な財務モデリングを学べるおすすめオンライン学習サイトを紹介しますにもある Financial Modeling Courses & Investment Banking Courses - Wall Street Prepと Mergers & Acquisitionsを使って対策していたが、面接やモデルテストであればそれで充分と感じた。周りの学生もWall Street Prepを利用している人が多かった印象)