【MBA授業まとめ④】Managing Corporate Turnarounds

コンサル時代も何度か関わらせて頂いたターンアラウンドにフォーカスした授業。コンサル時代は顧客企業の現経営陣の視点からしか物事を見ていなかった(見れていなかった)が、実際は他にも多様なステールホルダーが存在しており、複眼的な視点に触れることが出来た。

下記の項目でまとめています。あくまで自分の脳内目次用なので、書き方は雑です。

  • 授業概要
  • ケース・事例とキーワード
  • 学び(ランダム)
  • 感想・思い出

 

授業概要:

  1. ターンアラウンドを経験した企業のケースを題材に、ターンアラウンドが必要な状況に陥った要因、ターンアラウンドプランの策定・実行・結果を各ステールホルダーの視点から分析
  2. 実際のケースを題材とした模擬交渉
  3. 教授は Rupert Merson | London Business School

 

ケース・事例とキーワード:

  1. Rothschild/Conergy: クリーンエナジー
  2. Elan Corporation: 製薬、Altman Z score、ターンアラウンドの主導者選定
  3. Mondo Ottico Srl: ハイテク、ビジネスモデル選択
  4. Target Express: 物流、ストラテジックレビュー・ターンアラウンドプラン策定
  5. Fashion House: リテール
  6. Cygnets of Chelsea: SMB、サーチファンド
  7. Vodafone Turkey: 通信、多国籍企業のターンアラウンド
  8. Super Luxurious Auto: 自動車、ターンアラウンド交渉の実践・模擬交渉
  9. Harvard hospital: 医療、NPOのターンアラウンド 

 

学び(個人的に印象深い学びをランダムに羅列、授業で出てきた順番):

  1. コロナ禍でターンアラウンドの領域が盛り上がるのは必須。ただし、前提として過剰反応しパニックになってはいけない。教授は、長年この領域に関わってきて、ユーロ危機・リーマンショック含め経済危機を幾度も経験してきた。リーマン・ショック時は「資本主義の終焉だ」などと騒ぐ人もいた。しかしながら、いずれも時とともに状況は改善した
  2. ターンアラウンドにも複数フェーズが存在。エクイティの価値がまだポジティブな場合はrecapitilization, debt covenantsの条件再交渉などを行い再成長を目指す。エクイティの価値がネガティブになるとデット・エクイティホルダーを含むデット・エクイティ・スワップ、リファイナンス、ヘアカットなどの条件交渉に入る。それで解決策が見いだせない場合は倒産・会社清算となる
  3. ターンアラウンドが必要な状況に陥る要因としてファイナンシャルな観点とオペレーショナルな観点が存在。ファイナンシャルな観点からは過剰なレバレッジによるコベナンツヒット、オペレーショナルな観点からは事業の利益成長力の低下・経営力の弱体化。また、双方の観点が絡むのは株主間の争い、ファミリービジネスにおける世代間・家族間の争い、規制適用・強化に伴う事業の強制処分など
  4. 同じくターンアラウンドが必要になる要因について内部要因と外部要因で整理。内部要因としてはpoor management, inadequate financial control, poor working capital management, high costs, lack of marketing effort, overtrading, big projects, acquisitions, financial policy, organisational inertiaなど。外部要因としてはchanges in market demand, competition, adverse movements in commodity prices, change in government policyなど
  5. これに対して解決方針も同じくファイナンシャルな観点とオペレーショナルな観点に分けられる。ファイナンシャルな観点からは、デット・エクイティ・スワップ、リファイナンス、ヘアカットなど。オペレーショナルな観点からは、経営体制・事業計画の変更など。双方の観点が絡むのは、ビジネスモデルの変更、アライアンス・M&A、事業売却、会社清算など。また債務者主導か債権者主導かという観点も存在
  6. ターンアラウンドには、かなり多くのステークホルダーが関与する。旧・新経営陣、従業員、顧客、サプライヤー、株主、債権者(secured fix, secured floating, bond, trade, secondary, etc)、アドバイザー(会計士、弁護士、会社清算のエキスパート)、ターンアラウンド専門のプロファーム、監督官庁など
  7. Altman Z scoreモデルとは企業の信用リスクを測定するモデル(元は製造業向け。)流動性指標、収益性指標、収益性指標、レバレッジ、回転率を変数として算出 Altman’s Z-Score Model - Overview, Formula, Interpretation
  8. ターンアラウンドプランの策定・実行時の一般的な優先順位は...止血・沈静化(短期の財務上の課題解決・リーダーシップチームの形成)→ステークホルダーマネジメント→事業への梃入れ(戦略策定・実行、組織改革)→財務状況健全化(リファイナンス
  9. 多国籍企業の特定の地域・部門のターンアラウンドの通常との差異:取り組みやすい点としてファイナンシャルリソースの豊富さ、時間的猶予、強いブランド、全社ベストプラクティスの活用、豊富な人材、調達・マーケ等のスケールメリット、など。通常より難しさが増す点として、意思決定者と実行者の距離、組織政治、インセンティブ設計、内部取引・コスト配賦等を適正に行った真の事業価値把握、など
  10. NPOのターンアラウンドの通常より難しさが増す点としてガバナンスの弱さ、ファイナンシャルな視点の欠如・コスト意識の希薄さ、当事者意識を持ちターンアラウンドを主導するリーダー層の薄さ・実行力の弱さ、など
  11. 企業にもフェーズがあり新陳代謝が必要。Startup→Growth→Mature→Decline。勿論この流れは必ずしも一方向にのみ進む訳では無いが、大きなトレンドとしてはこの様に動いていく
  12. Zoom授業(イベント)の盛り上げ方のベストプラクティス:チャットの記入を推奨し、記入された内容を上手く拾いながら、議論を展開する方が盛り上がりやすい。チャット禁止で挙手制にすると、レクチャーする側の労力は減るが、タイムリーに質問・意見を拾うのが難しく盛り上がりに欠けがち。この教授が、一番Zoom授業の取り回しが上手だった

 

感想・思い出:

教授が全生徒70-80人のレポートに対し、個別でフィードバックを行うという神対応な授業だった(私が受けた授業の中では唯一)

また教授は、Zoom授業にも関わらず毎回蝶ネクタイを着用、悪口とジョークのギリギリを攻めたシニカルマシンガントークと私のイメージしていた「The イギリス人」という感じで、Zoom越しながら久々に英国に留学していることを実感出来た。(対面授業だったら、よりダイナミックさを味わえて面白かったと思うが...)

Strategy and Entrepreneurshipのfacultyの授業でありケースベースで進むため、授業内容自体は少しフワフワしており、この授業より前に受けていたFinanceのfacultyのDistressed Investing(いつかこの授業についてもまとめます)の方が、当たり前だがより実践的で今後に活かせそうな内容ではあった。

ただ教授の仕切りが上手なので、個別のケースディスカッション自体は面白く、元々コンサル時代にターンアラウンドのプロジェクトに何度か関わった経験もあったので、割とリアリティを持って楽しみながら授業を受けることは出来た。

グループ課題に、実際に企業が体験したターンアラウンドストーリーについてまとめるというものがあったのだが、私の所属していたチームはメンバーにTargetの元社員がいたためTargetを選定し、その方のツテでターンアラウンドに関わったメンバーのインタビューなどが出来、当時の取り組み・心境などを直接聞けて興味深かった。

また企業のフェーズの話は、自分の今後のキャリアを考える上での頭の引っ掛かりの一つとなった。隣の芝生が青く見えている部分があるのは勿論承知の上だが、コンサルで関われるのは基本的にはMature/Declineフェーズの会社・事業で、一度しかない人生ならばStartup/Growthフェーズの企業に関わりたいと思う様になった。Mature/Declineフェーズの企業の維持・活性化・復興も勿論重要だし、そちらの方が関われる「数字」が大きいのは事実だが、日本に明らかに不足している(と私が思う)のはStartup/Growthフェーズの企業であり、ここにもっとヒト・モノ・カネが集まる様な貢献をしていきたいと思っている。