【MBA授業まとめ⑬】Negotiation and Bargaining

MBAの授業で一番実践的だった授業。

 

交渉学の基礎を模擬交渉での実践を通してしっかりと学べる内容でしたが、豹変する同級生・自分に染みついた嫌らしいネゴマインドと向き合うことが求められる授業でした。

 

ちなみにMBA生活で最後に受けた授業でした! 

下記の項目でまとめています。あくまで自分の脳内目次用なので、書き方は雑です。

  • 授業概要
  • ケース・事例とキーワード
  • 学び(ランダム)
  • 感想・思い出

 

授業概要:

  1. 交渉種別、交渉の事前準備・戦術を模擬交渉を通して学ぶ
  2. 教授は Laura Giurge | London Business School

ケース・事例とキーワード:

  1. Biotech-naturally cotton:配分的交渉
  2. Coast News:統合的交渉
  3. Mom.com:チームによる交渉
  4. ABC Local 190:複数ラウンドに渡る交渉
  5. Bullard House:代理人による交渉
  6. Viking:ZOPAの存在しない交渉
  7. Harborco:複数ステークホルダーによる交渉

 

学び(個人的に印象深い学びをランダムに羅列、授業で出てきた順番):

  1. 交渉における4つの誤解:交渉力は生まれ持った才能、交渉力は経験によってのみ身に付く、良い交渉結果はリスクが付きまとう、交渉が上手い人は直感が優れている...というのは誤解。交渉は学べるもの

  2. 交渉の種類:ステークホルダーの数(1対1~複数対複数、3つ以上のステークホルダーetc)×交渉の項目数×交渉のラウンド数で様々なパターンが存在。例:1対1で1つの論点のみに1回のラウンドで合意するための交渉が最もシンプルな交渉。自分が取り組もうとしている交渉がいずれのパターンか、他のパターンに変えられる可能性があるか等を考慮しながら準備を行い交渉にのぞむ
  3. 配分的交渉:パイの合計値があらかじめ定まっており、一方の損得が相手の得損と直結する交渉。往々にしてパイの大きさは双方とも正確には把握出来ていない場合が多い
  4. 統合的交渉:交渉項目における柔軟な条件設定によりパイの大きさをより大きくすることが可能な交渉。各交渉項目の重要性には双方に差異があるという点を利用しパイの最大化を目指す
  5. チームによる交渉における役割分担:リードネゴシエイター、Good Cop、Bad Cop項目ごとの条件トラッキング担当、数字系の計算担当、ノートテイカー、などのうち体制・交渉内容に合わせて役割分担を決めてのぞむ
  6. 交渉に代理人を立てる場合のメリット・デメリット:メリット→専門的知識・経験、客観性、匿名性、意思決定の引き延ばし、デメリット→利益背反の可能性、長期的信頼関係・レピュテーションへの配慮薄、費用、コミュニケーションレイヤーの増加・ミスコミュニケーション、新たな交渉項目追加・条件付き交渉など柔軟な交渉が起きにくい、交渉ターゲット~留保・撤退ラインの双方から離れた中立的条件を落としどころとしがち
  7. 交渉における意図的な嘘の影響:交渉人本人→精神的エネルギー消費、罪悪感、主張の矛盾、信頼・レピュテーション低下、スケープゴート化のリスク、交渉自体→パイの縮小、最適状態から乖離した条件での合意、交渉破綻、組織→欺瞞文化、信頼・レピュテーション低下、法的責任(米国の場合は虚偽のBATNAの主張、重要情報の秘匿等は法的責任を追及されるリスクが存在) 

 

  1. 交渉の事前準備:Target Price, BATNA, Reservation Price, ZOPA, First OfferとそれらをまとめたPlanning Documentを可能な限り具体的に整備の上で交渉にのぞむ
  2. 交渉ターゲット Target Point:交渉の成り行き、交渉から双方が得られる便益、交渉相手との関係性等を想定した上で、合理的に合意可能と考えらえる条件の上限
  3. 最善の代替案 BATNA Best Alternative to Negotiated Agreement:当該交渉以外での最善となる代替手段。複数用意することが理想で、交渉前にはこの代替案の条件をより魅力的にすることに取り組むことが必要。交渉時には、十分に魅力的なBATNAを持つ場合は脅迫的にならない・極度に具体的にならない範囲で相手にそれを伝え、BATNAの魅力が低い場合はBATNAの改善に同時並行で取り組んでいることを相手に伝える
  4. 留保価格・撤退ライン Reservation price:文字通り交渉からの撤退ラインで、交渉の成立 or 不成立が便益の多寡に影響しない水準。BATNA±BATNA成立のためのコストを基準として、可能な限り具体的に設定して交渉にのぞむ。BATNAが変わる or 交渉の項目数が変わる場合以外で、交渉中に妥協して変更することは絶対にしてはならない。またこの条件を開示すると、相手は当然この条件での合意を目指すため、絶対に相手に開示してはならない
  5. 妥結可能範囲 Zone of Possible Agreement:交渉の双方が妥結により便益を得られる範囲 = 交渉の双方の交渉ターゲット~留保価格・撤退ラインの重なる部分
  6. First offer 初期提案:初期提案は議論をアンカリングする力を持つため、可能な限り初期提案を具体的に準備しておき積極的に提案を行う。逆に交渉相手から初期提案を受けた場合は、自身の交渉ターゲット~留保価格を踏まえて、初期提案が妥当でない場合は、再度逆提案をし直すことが必要
  7. スコアリングシート:統合的交渉においては各交渉項目を整理し、それぞれの重み付けと交渉ターゲット~Reservation Price(可能であればこの範囲で複数の選択肢を準備)を整理したスコアリングシートを用意する。これは実際の交渉にも活用可能であると同時に、メンバー間での具体的なレベルでの目線合わせにも有用。時間・リソースの余裕がある場合は、いくつかのオプションパッケージ(Multiple Equivalent Simultaneous Offers)を用意しておく。これを相手に提示して選ばせることにより交渉相手の項目ごとの優先順位の把握が容易になる
  8. 交渉計画 Planning Document:上記1-6を可能な限り具体的に記入した計画。複数人で交渉にのぞむ場合は、他メンバーとこの内容について十分な認識合わせを行い、曖昧な点を排除しておく or 交渉の最終権限保有者を明確化しておくことが必要

 

  1. 実際の交渉戦術:初期提案、交渉項目の整理・優先順位確認、条件付き譲歩、新たな交渉項目、条件付き合意、交渉撤退
  2. 初期提案:上記の通り。可能な限り初期提案を行い議論のアンカリングを目指す。相手から初期提案を受けた場合は、必要であれば逆提案を行う
  3. 交渉項目の整理・優先順位確認:複数の交渉項目がある場合、それを双方に明示的に整理し、双方にとって優先度の高い項目を明らかにする。優先度の高い項目が重なる場合はその項目の交渉は後回しにし、片方にとってのみ優先度の高い項目から交渉を行う
  4. 条件付き譲歩:交渉項目が複数存在する場合、相手にとってのみ優先度の高い項目で譲歩することを条件に自分のとってのみ優先度の高い項目での相手側の譲歩を引き出す
  5. 新たな交渉項目:基本的に交渉合意の可能性は交渉項目が増えれば増える程高まるため、交渉中に双方が関心を持つ新たな項目が発見された場合は、それを明示的に交渉項目として組み込む
  6. 条件付き合意:合意内容の一部を将来に発生する事象の結果次第の条件付きとする。相手への信頼度が十分でない場合も、相手の主張と連動した将来の条件付けを行うことで合意達成可能性を高めることが可能
  7. 交渉撤退:当たり前だが交渉項目を柔軟に増やす等の努力をしても双方のZOPAが存在しないことが明らかな場合は早々に交渉から撤退すべき 

 

  1. 複数ステークホルダーが存在する交渉の特徴:交渉中の情報処理の複雑性、連立可能性、妥協・合意への高いプレッシャー、合意形成のためのルールの必要性
  2. 複数ステールホルダーが存在する交渉の事前準備(1体1交渉との差異):見落としている交渉項目のより丁寧な調査(事前ヒア等)、連立シナリオの作成、各シナリオでのTarget Price, BATNA, Reservation Price,交渉項目ごとの優先順位の変化の把握、最終意思決定方法の提案準備
  3. 連立の戦略:各ステークホルダーのTarget Price, BATNA, Reservation Price,交渉項目ごとの優先順位の可能な限りの事前把握→各ステークホルダー内の役割分担、意思決定方法、権限権者の把握→各ステークホルダーの分類(長期連立、短期・特定項目連立、中立、連立不可、不明)→特定ステールホルダーと連立形成の場合のTarget Price, BATNA, Reservation Price,交渉項目ごとの優先順位の変化差分・相手にとって自身との連立形成以外の代替手段の把握→相手ステークホルダーの役割・権限分担を踏まえ適切な人材へアプローチ・関係性構築

 

感想・思い出:

MBA生活の最後に受けた授業。

授業を受ければ受ける程、自分の頭は割と「交渉人マインド」で出来上がってしまっているという悲しい現実に直面することが求められた。自分にとっては交渉の戦術を学ぶよりも、いかに交渉人的思考から脱却するかの方が課題だと感じた。とは言え、授業で繰り返し述べられていた、交渉はwin-loseでは無く如何に交渉の果実・パイの合計値を最大化するかが重要、という点は実践出来ている訳では無いので、頭に刻み込んで嫌らしい交渉人マインドからの脱却を図っていきたい。

 

記憶に残った模擬交渉中の出来事をいくつか。

・授業の初回の交渉で交渉相手(MBAの同級生)が交渉の前提となる情報について死ぬほど嘘をついていて、人間不信に陥りそうになった(その後、「流石に嘘つきすぎたはわ。ごめん」と謝られた)

・グループ交渉で同じチームだったメンバーが、事前準備では「私、共感的なタイプでソフトネゴシエーターだから、ほとんど交渉では役に立たないかも...」と言っていたのに、いざ交渉となると、財務数値を使いながら死ぬほどアグレッシブに相手を攻めていて、思わず笑ってしまった

・同じくグループ交渉で、相手のチームが喧嘩をはじめ、最終的には相手チーム全員がZoomから離脱してしまった